Lagrangian Point

1772年、ジョセフ=ルイ・ラグランジュは『三体問題に関するエッセイ』の中で、公転する主星と従星の間に存在する、重力場と遠心力が釣り合う点“ラグランジュ・ポイント”を示しました。この点に置かれた物体は平衡の状態となり、相対位置を変えずに公転し続けることができます。

様々な力の交差の中に見出される静かなる安定。

それは天文学だけの話ではなく、身近な空間にも見つけることができるはずです。

コレクション”ラグランジュ・ポイント”は、一見すると不安定な力や構造に潜んでいる平衡点を探り出すことで生まれた作品たちです。

  • HALF–THROTTLE

    shelf
    design: 岩元 航大
    size: low/ W.700 x D.350 x H.390
    middle/ W.700 x D.350 x H.740
    high/ W.700 x D.350 x H.1,260
    wide shelf board / W.1,290
    material: plywood, laminate, white ash

    正方形の対角線は四辺1に対し√2の長さになる、というピタゴラスの定理に着目した組み立て式のシェルフです。棚板に開いた正方形の穴に合わせて支柱を差し込んだ後、支柱を45°ひねるだけ。棚板の拡張も容易です。

  • TRINITY

    stool
    design: 大島 淳一郎
    size: W.370 x D.150 x H.370
    folding size: W.860 x D.150 x H.75
    material: hard maple, rope

    自在に曲げられ、結ぶこともできる。TRINITYはロープの特徴を構造に利用した折りたたみ式のスツールです。脚と座面に通したロープの両端に結び目を作り、三方向で引き合う関係を与えてあげると、美しく張られたロープがしっかりと脚を支えます。折りたたむ際にも、ロープは脚の留め具となり、持ち手となって活躍します。

  • LEAN

    coat rack & side table
    design: 馬場田 研吾
    size:
    coat rack / W.440 x D.440 x H.1,700
    side table
    square / W.450 x D.450 x H.450
    circle / W.500 x D.485 x H.450
    material: oak, walnut, white ash, glass top

    一本の脚が隣の脚に寄りかかり、隣の脚はそのまた隣の脚に寄りかかる。LEANは、L字形の脚が互いに支え合うことで自立するコートラックとテーブルです。一見すると不可能図形「ペンローズの階段」のような不安定さの中に、強固な安定性が実現されています。釘やビスなどの部品を使わず、簡単に組み立てられるのも魅力です。

  • SLING

    wall shelf
    design: 李 薇娜
    size: W.415 x D.150 x H.270 strap length: 170
    material: ash, textile belt

    SLINGは、異なる長さの五つの面をもつ壁かけ棚です。載せたものの重さや形に応じて傾き、重心のバランスが取れる位置で安定します。吊り紐は簡単に取り外せるので、吊り方を変えれば、様々な表情が楽しめます。

    • TENSILE

      shelf
      design: 池内 宏行
      size: W.650 x D.300 x H.1,700
      material: plywood, birch

      TENSILEは、合板のしなりを利用して、棚板を固定するシェルフです。棚板に開けられた切り込み穴に支柱を差し込んでいくと、支柱に押し出された切り込み部分が美しいアーチを描き、その反発力によって棚板が固定されます。支柱はただの角材で、棚板の高さは自由に変えることができます。

    • CATENA

      mobile
      design: 中本 優美
      size: W.1,020 x D.640 x H.1,060
      material: rayon yarn, piano wire

      糸の両端を持って垂らすだけで、美しい曲線が生まれる。CATENAは、重力が作り出すこの線の魅力を存分に引き出したモビールです。空気の流れに呼応してそよぎ、手で触れるとざわつく。その時々で豊かな表情を見せてくれます。

    • CRIMP

      low table
      design: 吉野 智也
      size: φ.900 x H.410
      material: veneer, cord, glass top

      CRIMPは、2枚の薄板が美しい線を描くローテーブル。そのままでは自立することができない薄い板も、紐の力で湾曲させて異なる曲線を与えることで、重い天板を支えるだけの強度が得られます。分解すると元の薄板に戻るので、コンパクトに収納できます。

    • SEVEN–TENTHS

      swing & small box & birdhouse
      design: 松本 雄樹
      size:
      swing / W.550 x D.180 x H.60
      small box / W.400 x D.180 x H.280
      birdhouse / W.180 x D.180 x H.260
      material: birch, pine, rope

      円周の半分以上と触れ合っていれば、その円と接する物体は持ち上げることができる。SEVEN – TENTHSは、この法則を応用した吊り下げ式のモジュール家具です。共通する機構をもった多様なパーツは、差し替えるだけで交換でき、収納棚や巣箱のほかブランコまで、思い思いの使い方を楽しめます。

    • WATER BALANCE

      flower vase
      design: 松本 理紗子
      size: W.660 x D.95 x H.260
      material: white ash, stainless steel, leather strap

      量るものの重さを支点からの距離で読み取る秤。WATER BALANCEは、この秤の仕組みを使って、もの言わぬ花の渇きを視覚化します。始めは釣り合っていたはずの花器と錘ですが、花器の水が気化するにつれて均衡を崩し始めます。秤の傾きが静かな花の声となり、視線の先にある機宜を知らせます。

    • TORQUE

      low table
      design: 見明 暢
      size: W.860 x D.860 x H.440
      material: plywood, laminate, oak

      穴の開いた板に棒を通して傾けると、棒は穴の側面に引っかかる。TORQUEはこの仕組みを使い、二枚の天板を異なる位置で支えています。脚が倒れ込んで安定するため、荷重がかかると強度が増します。捻れにより色違いの天板が各々の表情を見せる点も魅力です。天板は裏返しても使えるので、異なる風合いを使い分けることも可能です。
      制作協力:安多化粧合板株式会社

    • STRAW

      desk light
      design: 岩元 航大
      size: Max W.700 x D.100 x Max H.740
      material: steel, aluminum, LED

      グラスに刺さったストローの角度は、グラスの径と深さで変わる。STRAWは、この姿に着想を得たデスクライト。ベース内の段差にライト本体を引っ掛けることで、光の角度を調節します。